トゥルー・バイパス、スイッチャー、電源とワイアレス
まずバイパス方式の説明をします。
基本、バイパス方式には2種類あります。
バファード・バイパスとトゥルー・バイパス
エフェクターを繋いだだけで音色が変わってしまった経験があると思います。
そこで、音色の変化が少ない方式として近年、一般的になってきたのはトゥルー・バイパスです。
バファード・バイパスとトゥルー・バイパスの図

回路内で信号を切り替えるので、
off 時でも音色が変わってしまう。
しかし、ローインピで出力される

回路を通らないのでoff 時の音色の変化が少ない。
ハイインピのまま出力する
ハイ・インピ:インピーダンスは交流抵抗と訳されます。単純にハイ・インピーダンスの信号は劣化しやすく、ノイズを拾いやすい。(パッシブ楽器の出力)
ロー・インピ:ロー・インピーダンスの信号は劣化しにくく、ノイズを拾いにくい。(アクティブ楽器の出力)
…と思ってください。
昔のエフェクターは図bのin側だけが切り替わっていました。(out側は基板上です。)
これだと、回路の一部を通ってしまい音色が変わってしまい、
しかも、ポップノイズ(注23)も出てしまうために、
電子回路を使った無接点スイッチ(注24)を各メーカーが使用し始め、一般化しました。
この方式をバファード・バイパス(図a)と言います。
ハイ・インピの信号をロー・インピに変換し、ポップノイズもありません。
と、良いことだらけだと思われていたのですが、回路に入った時にバファーアンプ(エフェクター#01プリアンプ参照)を通ります。このバファーの初段にオペアンプと言う増幅器を通し回路内で扱い易いレベルまで増幅させます。
その後、エフェクト音とダイレクト音に分けられますので、オペアンプの個性がもろ出た音になります。(オペアンプを自分で交換する”強者”もいるくらいです。)
この音色が”良い”と感じられれば問題はありませんが、この変化を嫌うプレーヤーが多かった為に
トゥルー・バイパス方式(図b)が主流になってきました。
この方式だとエフェクター回路を通らないので、音色の変化は少ないのですが、接点が増えてしまい、ロー・インピのまま出力します。(接点抵抗分の損失と、外来ノイズの影響を受けやすい。)
(注23)ポップノイズ:アンプのスイッチをon-offするときに”ボッ”ってがすることがあります。
この音をポップノイズと言います。
(注24)無接点スイッチ:一般的なスイッチは機械式と云われ、内部で端子が切り替わっています。(イメージとしては、コンセントから直接、電源プラグを抜き刺しする感じ。)
これは、リレーや電子回路を使い電流の流れを切り替えるために、切り替え時の動作が安定しています。
参考:想像ですが…”バファー”として売っているエフェクターは音質の変化を考慮してありますが、
バファード・バイパスのエフェクターはエフェクトする前提のためのバファーなので
バイパス時の音質変化にはあまり気を使っていないのではないかと思っています。
エフェクター単体で考えれば、トゥルー・バイパスはバイパス時の音色変化は少ないでしょうが、
複数のエフェクターを直列に繋げると、接点が増え、機器内の配線が長くなります。
ハイ・インピの信号ではさすがに劣化してしまい、外来ノイズの影響を受けやすくなります。
高価なケーブルを使っても、この劣化は抑えられません。
このようにトゥルー・バイパスも弱点を持っています。
バイパス時の音色の変化が許容範囲内ならば、むしろバファード・バイパスのエフェクターの方が有利です。
そこで、対応策として考えられるのは、可能な限り早い段階でロー・インピに変換することです。
- アクティブ・ピックアップにする
- 楽器にバファーorプリアンプを内蔵する
- エフェクタ―の1番最初にプリアンプを入れる、または音色の変化が許容範囲内のバファード・バイパスのエフェクターを使う
などが考えられますが、
これらの方法はお気に入りのパッシブの楽器をアクティブ(エフェクター#01プリアンプ参照)にする事と大差ありません。
そこで、アクティブ、パッシブ関係なく使える方法として、
僕はスイッチャーを使うことをお勧めします。
スイッチャーの勧め
スイッチャー

このスイッチャ―はループ×2、ABセレクター×1、となっています。
off時はスイッチ回路もバイパスして最小の接点で出力するとのこと、
電源のノイズを除去してくれるパワーサプライ(注25)も付いていて、とても重宝しています。
(注25)パワーサプライ:ACアダプターからの電源を複数のエフェクターに供給するユニット。
スイッチャ―の原理

↑のスイッチャーです。
ご覧のように、外部にトゥルー・バイパス回路を作りますので
エフェクターのバイパス方式などを気にせずに好きなエフェクターを使えます。(基本、エフェクターはonにしたままです。)
スイッチャーの使用例

”ループ1”にワウ、”ループ2”にマルチのMS-60Bを、”ABセレクタ―”でout-tunerを切り替え、プリアンプに送ります。
その日の現場で使用するエフェクターによって、ワウやMS-60Bを替えます。
エフェクターを使用しない時は、スイッチャーも外し、プリアンプのチューナー・アウトにチューナーを繋げます。
エフェクター #04 で書いたように、ボードは組まずに現場に合わせたセットを持って行きます。
また、プログラマル・スイッチャ―と言って、マルチ・エフェクターのように、
接続したエフェクターの組み合わせ、順序などをプログラムして呼び出せるものもあります。
単なる切り替えスイッチと考えると割高感がありますが、とにかく便利です。
マルチ・エフェクターを使い、これのsend-returnにお気に入りのエフェクターをつなぐのも良いしょう。
参考:こだわりついでに…
エフェクターやスイッチャーを接続する短いケーブルを”パッチ・ケーブル”と言います。
パッチ・ケーブルとして各メーカーが売っていますが、エフェクター#03ケーブルで書いたように、このケーブルでも音色は変化しますので、
「楽器に使用しているケーブルと同じものをパッチ・ケーブルに使用することによって、パッチ・ケーブルによる音色の変化を最小限にできます。」
電源
音質やノイズにこだわっているなら、電源にもこだわりましょう!
ACアダプターは構造上どうしてもノイズが乗ってしまいます。
現場によって電源、外来ノイズ等の環境は違います。
自宅や何時ものリハ・スタ、前回のライブでは問題なくても、突然、ノイズが乗ったりします。
前出のようなノイズ除去機能のついたパワーサプライを使うか、ノイズ除去ユニットをアダプタ―につなぐべきでしょう。
バッテリーはノイズレスなので、僕はエネループで自作してみました。


エネループ7本で9.4V程になります。
↑スイッチャーの使用例のセット。ワウ、MS-60B、チューナー、HAO Bass Liner(18V)と使用して、リハ~本番と丸1日使えます。
このセットで6時間以上は持つので、エネループはパワフルだと思います。
また、18Vに昇圧するのにはチャージ・ポンプ(ph:b)を使っています。
ワイヤレス・システム
ワイアレスは理論上はケーブルを使うよりは音質の劣化は少ない筈ですが、方式等によってやはり、変化してしまいます。
トランスミッター(送信機)までのケーブルを替えてみるなど、皆さん色々と研究しています。
また噂では、高価なものが良い音がするとは限らないようです。
(やさしい音楽理論‐楽器編 #02 で書いたように、音響的に良い音が音楽的に良い音とは言えないからでしょう。)
最近はワイアレスを使っていませんので、紹介は出来ませんが、
経験的には楽器に繋ぐもので、
1番、世界が変わったのはワイアレス・システムでした。
音楽的により良い効果を出すために、色々とエフェクターを使ってきましたが、
いくら良い音を出していても、ワイアレスでのパフォーマンスには敵いません。
ライブではここぞという時に、客席に飛びこめば”大盛り上がり”。
「一発で勝負がつきます!」
ケーブルがない自由さだけではなく、サウンド・チェック時に客席で音の確認もできます。
ワイヤレスはとても楽しく、便利ですので超お勧めです。