ベースを買う時に必要な知識
材や構造でおおむね音の方向は決まることは理解していただけたと思います。
外観でも触れたようにいくつものパーツで構成されています。
これらも音色に影響をもたらします。
今回はそのパーツの話!
各パーツによる音色の違い
その中でも、最も影響があるのがピックアップです。
ピックアップ
各メーカーが特色を持ったピックアップを作っていますが、
表のタイプで判別できます。
(外観、ピックアップの画像参照)
PBのピックアップ | 中域にピークあり太い。他の楽器の音に埋もれにくい(以下P) |
JBのピックアップ | フロント・ピックアップだけだと、Pに似ている。 リア・ピックアップだけだと、太く高域が多い。 Jacoに代表される音です。 2つのピックアップを同じボリュームで使うと、 低域から高域までバランス良く出力します。 ハムバッキン効果でノイズも少ないのでこの使い方が推奨です。 基本、全開です(以下J) |
MM(Music Man) | Pに似ていますが、こちらの方が低域から高域までレンジが広い。 内部のコイルの結線しだいでPやJ風になります |
ソープバー | 外観では内部が分からないので、P、J、MM風と内部しだいです。 ルックスの都合上、この形にしているのでしょう |
これらの組み合わせで音のバリエーションが増えます。
細かいことですが、ピックアップの位置でも音が変わります。
ネック寄りに設置すると低域が多く、
ブリッジ寄りだと高域が多く出力されます。
アクティブとパッシブ
アクティブとは音を出すのに電池が必要な楽器です。
パッシブは電池が要りません。
アクティブにも2種類あります。
ピックアップ本体に電気送らないと音のしないタイプと
ピックアップ自体はパッシブで、ボディ内にプリアンプ(注5)が設置されているタイプ。
(このタイプはスイッチで、パッシブでも音が出るようになっているものが多い。)
(注5)プリアンプ : オーディオと同じで、Treble、Bassなど付いています。
パワーアンプ(注6)に信号を送る前段階に音を整理するためのアンプ。
(注6)パワーアンプ : 単純に音を大きくします。
楽器に付いている”ツマミ”の説明をします。
コントロール
画像は右側にネックがある場合です。
Vol. : ボリューム Tone : トーンコントロール(高音域をカットする。)
Bal. : バランサー(2つのピックアップの比率を変える。10:0~5:5~0:10)
Tr. : Treble Mid. : Middle B : Bass
EQ : イコライザー 特定の周波数を中心に増幅、減衰させる機器。
実は、ピックアップの項で”シングルコイルはノイズが多いので、
ハムバッキンに…”と書きましたが、
シングルコイルの音が好きなプレイヤーも多いのです。
そこで、ノイズ対策のためにアクティブ・ピックアップが登場しました。
原理は、音を小さく拾えばノイズも小さいので、
小さく拾って、音の成分だけ大きくすればノイズ成分が少なくなります。
そのため、ヘッドルーム(ダイナミック・レンジ)(注7)が
パッシブのように広くありません。(いくら強く弾いても大きな音がしない。)
これを嫌って、パッシブ・ピックアップを愛用しているプレーヤーも多いです。
(注7)ダイナミック・レンジ : 小さい音と大きい音の差。
ピックアップ等の入力機器の場合にヘッドルームという。
*参考 : 音は低い高い、大きい小さいで表現されます。低い、高いは周波数。
大きい、小さいは音圧( ヴォリューム )です。
個人的には、 J-J の音が好みです。
その他のパーツ
ペグとブリッジ
ペグやブリッジも音に影響をあたえます。
これらのパーツは金属製ですが、なぜか、重いものの方が ”しまった” 良い音がします。
”グレードアップパーツ”といって交換用に色々と販売されています。
やはり、各メーカーが色々なタイプのものを出しています。
ほぼ規格が決まっているので、サイズ等を確認して購入すれば、
自分で替えることができますので、これらのパーツを交換するプレーヤーもかなりいます。
ペグ : ほぼこの2タイプです
ブリッジと言っていますが、
正確には、サドル、ブリッジ、テールピースと元々3つのパーツでした。
弦を乗せているのが、サドル。
サドルを止めているのがブリッジ。
弦を引っ掛け固定しているのがテールピースです。
ベース( Fender 系はギターも)は一体型が多いです。
ブリッジ
フレットとフレットレス
昔はフレットを選ぶ余地などありませんでした。
現在は高さ、太さ、形、材質と選べます。(オーダー以外には、買う時には選べません。)
もちろん、音質にも多大な影響がありますが、演奏スタイルの方に影響あります。
フレットの違い(思いっきり極端な例)
高く、硬いフレット(ステンレス等) | 音の立ち上がりが早い。 高域が多い。 押弦(弦を押さえる)が楽。強く弾ける | グリッサンド(注8)、シフティング(注9)時に指に当たる。弦が早く劣化する |
低く、柔いフレット(ニッケル) | ↑ に比べ、音の立ち上がりが遅い。まろやかな音色。 押弦を助けてくれない | グリッサンド、シフティングがスムーズ。 ヴィブラートがきれいにかかる。 表現の幅が広がる |
(注8)グリッサンド : スライド。弦を沈めたまま指を移動させ音を滑らかに変化させるテクニック。
(注9)シフティング : ポジション移動。左手のネック上の位置を移動させること。
「このベースのフレット替えたらもっと好みの音になる。」と思っても、
新品のフレットを替える人はホントに少数だと思います。
フレットを打ち換える事になったら、調べてみて下さい。
フレットレス・ベース
junzo で書いたようにジャコ・パストリアスに出会って、僕の人生は変わりました。
ある意味、先祖返りのようなことで、せっかくフェンダーさんが付けてくれたフレットをあえて抜いちゃったんです。
クラッシックの楽器にはフレットがないですよね。
その理由の1つ(全てかも?)に純正率(注10)に近い響きで演奏したいからなんです。
僕がフレットレスにしたのは Rick Danko( The Band のベーシスト) の音みたいにしたかったのですが、Greco のジャズベを塗装されたメイプル・ネックに替えたために、Jaco みたいな音になったんです。Rick Danko の音は、サスティーン(注11)のない”ボッ、ボン”みたいな音でした。
コントラバスをピチカート(指で弾く)した時のような音にしたかった為だったと思います。
しかし、Jaco の音は正反対で、きらびやかで伸びのある音でした。
世界中のベーシストがびっくりしたのです。
彼の登場で”エレクトリック・ベースのフレットレス・サウンド”が確立したと思います。
(注10)純正率 :倍音から発生する自然な音程。
純正率の不都合を解消するため、バッハの時代にオクターヴを12の半音の分けました。これが平均律です。故に、開放弦と12Fの音が同じ。これはこれでイマイチ綺麗に響かないので、ピアノの調律はこの合間の微妙なチューニングをする。
(注11)サスティーン:音の伸び。「サスティーンが良い(長い)。」は音がよく伸びるってこと。現実的にはピークを低くすると減衰率が低くなるので、サスティーンが良いように聞こえる。↓ グラフ参照。
弦
これが振動して音になるのですから、音色に関しては影響力大です。
そしてすぐに劣化します。(弦が「死んだ」、「くさった」といいます。)
毎日2時間弾いたとすると、
最初の4時間程で劣化(音色が変化)が始まり、この状態が 1~2週間続きます。
この段階(劣化の2段階目)の期間が長い弦が、一般的に「長持ちする。」と言われていると思ます。
1ヶ月目辺りでもう仕事には使えなくなります。(弾力が無くなる)
それでも練習位なら我慢できます。
その後は音程も悪くなってくるので、2ヶ月位が限度と思ってください。
ロングライフを謳った高価な弦もありますが、
それなりの弦をさっさと替えてた方が体、気持ち共に良いと思います。
色々なメーカーの色々なゲージを試してみてください。
感触、音色が良く、そして楽器との相性が良いものを見つけましょう。
例えば、僕は
JB には 045~105 のセット。
MVP4 は 040~100(メーカーは同じ)と楽器によってゲージを変えています。
弦のテンション(張力)をどちらの楽器も同じ感じにするためです。
また、メーカーによっても変わります。K社の弦はD社のより細くても堅く感じます。
メーカー、構造等によって弦のテンションは変わります。同じモデルでさえも変わります。
弦、楽器のメーカーが変わっても、同じようなテンションを得られるようにしています。
ケーブル
正しくは、楽器(ギター)用ケーブルですが、一般ではシールドと呼んでいます。
何からシールドしてるかというとノイズからです。
以前、有名日本メーカーからケーブルのブラインド・テストの依頼を受けました。
国内外の有名ケーブル7社、8本のケーブルをテストしました。
審査はそのメーカーの方6名と僕。
2本のケーブルを僕がギターとベースで1本ずつ弾いて聞き比べます。
好きな方を選び、トーナメント方式で1番を決める。
(組み合わせでの有利、不利を避ける敗者復活方式)
というものでした。
ケーブルで音が違うのは知っていましたが、聞き比べてみると驚くばかりに違いました。
結果は、他の国内メーカーが1位。検討むなしく依頼社のケーブルは2位になりましたが、
そのメーカーの方曰く「価格差を考えれば、納得です。」とおっしゃっていました。
「海外製の高級ケーブルが良いとは限らない。」と感じました。
ギターはアンプのスピーカーの前にマイクを立てて音を拾います。
ギター・アンプから出た音が自分の音なので、” 弦~楽器~ケーブル~エフェクター等~ケーブル~アンプ ”とここまでが自分の楽器と考えていると思います。
ベースはラインで送ります*から、” 弦~楽器~ケーブル~エフェクター等~ケーブル ”までが自分の楽器と考えられます。アンプの個性は反映されないので、癖のないケーブルの方が楽器の特性を伝えられると思います。
共に楽器の1部と考えるべきでしょう。
*ラインで送る:ベースはダイレクト・ボックス(D.I.)を使って直接、音響卓(ミキサー)に入力され、録音、再生される。後述:エフェクター #01 D.I.参照
ベースを見に行きましょう!
このように楽器の音色を決めるには多くの要素が含まれています。
全く同じスペックで作った楽器でも出来上がってみると音も弾き心地も違いますから、
出来上がって楽器屋さんに並んでいるものを試奏して選んだほうが良いと思います。
お気に入りの1本が見つかっても、この2項目は必ずチェックしましょう!
- ネックの状態
- ナットの溝の高さ
ネックには ” トラスロッド ” と言って、弦の張力の反対方向にネックを引っ張るように
金属の棒が仕込んでありますが、何時も弦に引っ張られているため
徐々に弦の方向に曲がってきてしまいます。また、トラスロッドは金属ですので、温度変化にも反応してしまいます。
製造後、数年の間はネックは反ってきますが、4、5年で落ち着きます。
ある程度まではトラスロッドで調整できますが、極端に反ったり、ねじれたり、波打ったネックは
リペアに出すしかありません。
楽器屋さんに数か月並んでいた楽器なら、ある程度のネックの狂いは仕方ありません。
どの程度までなら許せるのか。
そして、ネックの調整、ナットの溝の高さについては次回の ” 楽器のメンテナンス ” で
詳しく説明します。